それは悲しいくらい絶望的な差だった。
僕はもう、いつだって、彼に勝てなくなっていた。
今まで、そんなに本気で勝とうなんて思ってもいなかった。
でも、今思うと、それは本心ではなく、クールなフリをして強がっていただけなのかもしれない。
ただ、自分を安心させるためだけに、彼の悪いところだけしか見えないように視線を固定して、それでいてそんな自覚もないままに、それが彼の全体であるかのように見ていた。
自分の中に彼より劣っている部分があるなんて認めたくなかったんだろう。
本当は見えているはずのものはノイズであるかのように無視していた。
今思うと本当に馬鹿だったと思う。
ニセモノの優越感と焦りからくる強がりを一緒くたにして自分の本心に気づかないように自分自身にさえ隠していた。
僕がそんな愚かな時間を過ごしている間に彼は着実に、そして確実に前進していた。
僕に罵倒されることがあっても
「まったくその通りだ。君のいうとおりだよ。」
と、反論することなく笑顔でやり過ごす。
僕にはそんな真似ができなかった。きっとそれが僕と彼との差だったのだろう。
今でも彼は僕のことを尊敬の眼差しで見ているけど、その視線が僕にとってはとても痛かった。
全てに気づいてしまった今となっては、まだ認めたくない気持ちが残っているけれども、自分が間違っていたと認めるしかないのだ。
既に悲しいくらい遅いけれども、今は真実を見極め、彼に追いつけるよう、いや、自分が成長できるように生きて行きたいと思う。