最初に断っておきたいこと
VB9の話です。 匿名型自体の説明はしていません。 最後になぜ今回はC#ではなくVBなのか説明します。 簡単なサンプルにするため仕様がシンプルで効果を感じられないかもしれませんが、 もしもっと複雑な仕様だったら等、想像してみてください。
まず最初に先日の匿名メソッドのエントリでも私が考える読みやすいコードの要素について書きましたが、今回は
1.処理のスコープを最小にする。
2.よりコードに意味を持たせる。
という2点について注目していきたいと思います。
まず最初に、下記のサンプルを見てください。
簡単な仕様として、引数で渡された在庫リストの数量と金額の合計を算出します。
Public Class 在庫 Public 数量 As Integer Public 金額 As Integer ''以下定義が続く End Class Public Class サンプル1 Public Sub サンプルメソッド(ByVal 在庫リスト As 在庫()) Dim 数量計 As Integer = 0 Dim 金額計 As Integer = 0 For Each 在庫情報 As 在庫 In 在庫リスト 数量計 = 在庫情報.数量 金額計 = 在庫情報.金額 Next End Sub End Class
この例の場合、確かに、数量計と金額計を算出したいのはわかりますが、数量計と金額計はそれぞれ独立した変数となっているため、関連があることをコード上に残せていません。
そこで次のサンプルを見てください。
Public Class サンプル2 Private Class 在庫計 Public 数量計 As Integer = 0 Public 金額計 As Integer = 0 End Class Public Sub サンプルメソッド(ByVal 在庫リスト As 在庫()) Dim 在庫計情報 As New 在庫計 For Each 在庫情報 As 在庫 In 在庫リスト 在庫計情報.数量計 = 在庫情報.数量 在庫計情報.金額計 = 在庫情報.金額 Next End Sub End Class
privateなinner classである在庫計を作成し、サンプルメソッド内で、インスタンスを生成し利用することで、数量計と金額計は独立した変数ではないという事と、在庫の合計を保持しているという意味を持たせる事ができました。
その反面、在庫計クラスはサンプル2クラス全体から利用できるようになってしまいましたので、ほかのメソッドでも使っているかもしれない可能性が生まれてしまいました。
ここで、次のサンプルを見てください。
Public Class サンプル3 Public Sub サンプルメソッド(ByVal 在庫リスト As 在庫()) Dim 在庫計情報 = New With {.数量計 = 0, .金額計 = 0} For Each 在庫情報 As 在庫 In 在庫リスト 在庫計情報.数量計 = 在庫情報.数量 在庫計情報.金額計 = 在庫情報.金額 Next End Sub End Class
数量計と金額計をメンバに持った匿名型としてインスタンスを生成し、変数に適切な名前を設定することで、サンプル2の利点を生かしたまま、在庫計というクラスを作成しているわけではないので、他のメソッドでも利用されているかもしれないといった可能性が発生しなくなりました。
このように、匿名型を利用することで、できるだけ少ない範囲のスコープを維持したまま、よりコードに意味を持たせる事ができます。
最後に、何故C#ではなくVBで書いたのかというと、
C#の匿名型はメンバがすべて読み取り専用のプロパティとして宣言されるため、最初に宣言した時に設定した値を変更する事ができないからです。
VBでいうところの
Public Class サンプル4 Public Sub サンプルメソッド(ByVal 在庫リスト As 在庫()) Dim 在庫計情報 = New With {key .数量計 = 0,key .金額計 = 0} For Each 在庫情報 As 在庫 In 在庫リスト 在庫計情報.数量計 = 在庫情報.数量 在庫計情報.金額計 = 在庫情報.金額 Next End Sub End Class
というコードになってしまい、コンパイルエラーになるという事ですね。
では、最初の設定時に集計した値を設定してやれば良いのですが、その話は次回以降のエントリにします。